朝雲暮雨 八戒編
は 風呂上りに基礎化粧を 顔に施しながら隣室との壁を見あげた。
先ほどの言葉どおり八戒は待っているだろうと思う。
でも 昨夜のようにがこの部屋を自分から出て行かなければ
無理にベッドに引き入れようとする人ではない。
ただ 笑顔で毒づかれるのは嫌だなと思う。
かなり独占欲が強くて嫉妬深いとは思っていたが、今回のの家出は
素の八戒を 引き出してしまったように思う。
それでも 八戒が嫌になったりはしないな・・・・とは判断していた。
むしろ その独占欲は を好きだからのことでうれしくもある。
結局 も八戒に独占されたいと願っているのだと、気付いてしまえば答えは簡単だ。
は 鏡に向かって微笑むと椅子から立ち上がってドアに向かった。
隣室のドアの音がして 八戒は息を大きく吐いた。
は 今夜も来ないかもしれないとどこかで思っていたが、
どうやら 杞憂に終わったようだ。
自室のドアが開いてが入って来てくれたのを見た八戒は、
本当の意味で自分はこの愛しい女性を、失わずに済んだと思った。
腕を広げて笑顔を向ければためらいがちではあるけれど甘く柔らかいその身体を、
の意思で預けてきてくれた。
「 ここにこうして帰ってきてくれて僕はうれしいです。
もう 何処にも行かないで下さい。
を失ったら僕はどうにかなってしまいますよ。
お願いですから 約束してくれませんか?」
八戒は 腕の中のの耳元で囁いた。
「八戒さん 約束はできません。」
「どうしてですか?」
「それは 今度家出したり八戒さんの前からいなくなった時にわかると思います。」
「意味深ですね〜 。
それは これからの僕たち2人の関係や状況で変わって行くという事なのでしょうね。
に愛され続けるためには、浮気とか女性関係とかには
ことさらに気をつけないといけませんね。
では さっそくに僕がどれほどを愛しているか、判って頂きましょうか。」
八戒は にキスを落としながら2人の身体をベッドに横たえた。
「 この10日間ほどは 本当に寂しかったんですよ。
貴女が この家に来る前の事を 思い出して1人でやろうとしてみたんですが、
何も思い出せなくて 我ながら可笑しいくらい ダメッぷりを発揮してしまいました。」
鼻と鼻をくっつけ お互いに見つめ合う形で 八戒はに 笑顔を向けながらそう言った。
その言葉には思わず 微笑むと「私も寂しかったですよ。」と返した。
「本当ですか?」
「本当ですよ。」
「嘘じゃないんですね?」
「嘘なんか言いません、こんな時に八戒さんに嘘を言ったら どうなるか考えると
とても恐ろしいですから・・・」
「よく判っているじゃないですか、。
このベッドで 愛を交わすのは 今夜が初めてですね。
2人でゆっくりと眠れるように広くしたのに 僕1人で眠るのは嫌でしたよ。
さあ 僕の愛を受け取って の愛を見せて下さいね。」
その言葉には瞼を閉じて 八戒に先を促した。
始めは やさしい啄ばむようなキスで なごませると、段々と それを深いものへと変えていく。
まだ と 数えるほどしか愛を交わしたことのない 八戒は それだけでも
充分に 感じてきた。
まして 10日も日を空けてのことで 余裕がない。
「 今夜はまず 僕が先にいきたいです。
その後 をたっぷりと 感じさせますから・・・・いいですか?」
「えっ?そんなこと 聞かないで下さい。
なんて答えれば言いのか 解らないです。」
「そうですよね、でも 僕が利己主義だと思われるのは嫌だったので
一応断っておきますよ。
が欲しくて どうしようもないんです。
自分勝手に SEXするのは 僕の流儀に反するんですが 我慢できないんですよ。
それだけ が魅力的だということで 許してください。」
八戒は 次のキスを 激しいものへとかえて のパジャマに手を掛けた。
本当に 余裕がないんだとが思うほどに ボタンを外す手が早い。
上半身を すぐに裸にすると ズボンと下着もいっきに下ろされた。
それでも 八戒は ちゃんと愛撫を体中に施してゆく。
ただ それがものすごく 激しくての身体は 急降下するように感じていた。
の口から 甘く切ない吐息が漏れ出すと 八戒の手は 足の間に伸ばされた。
「こんなに性急で どうかと思ったんですが ちゃんと感じてくれたんですね。
のここ 濡れてますよ。
もう少し 濡らしておきましょう。」
言葉と共に 八戒の指が の中に入ってきた。
「あっ・・・・八戒さん、そ・・・・んな・・・・いいですから・・・・・」
「えぇ でも 痛くするのは 愛がないのと一緒ですからね。
それだけは ダメですよ。
僕は が欲しいのであって 女性の身体が欲しいのではないんです。」
そう言いながらも 八戒の指は の中をせわしなく動き回る。
いつもなら の媚態を見ながら 自分も感じていくのが楽しい八戒なのだが、
今夜は とにかく痛くないだけ を感じさせる事に集中した。
充分に濡れたと判断した八戒は 避妊具を取り出して付け 「 愛しています。」
そう言うと 我慢が利かなくなった 自身をにあてがって いっきに入った。
「んっ・・・・あぁっ・・・・」
激しく貫かれた事に の身体が こわばった。
一旦 最奥までたどり着くと 八戒はそこで止まった。
「 痛かったですか?」
「いっ・・・いえ・・・・だいっ・・・じょうぶっです。
ちょ・・ちょっと 苦しかった・・・・だけですから・・・・心配要りません。」
「では 動いてもいいですか?」
「えぇ。」
の様子に安心した八戒は 己の満足を得るために動き出した。
の中が与えてくれる 蕩けるような熱。
愛撫を与えると それに反応して 痛いほど締め付けてくれる束縛。
出し入れのたびに 絡んでくる その愛撫。
自身が 感じる事によっておこる 身体の中の細波。
八戒が 覚えているの中のすべてが 八戒自身に 全てを与えてくれる。
加えて 目にするのは 美しくも淫靡な肢体。
そして 耳にするのは つややかに あがる 嬌声。
八戒は 本当に我慢が出来なくなっていた。
自然に 動かす腰が早くなる。
「 ぼく・・・は・・・もう・・・・ううっ」
が まだ いってないとは知りつつも 八戒は己を放った。
身体を の胸に預けると 優しく髪を撫でてくれる。
自分勝手な行為だったのに それを許してくれている そのの優しさに
八戒は 母性愛を垣間見るような気がした。
自分の息が整うと 八戒は から一旦身体を離した。
「 本当にすいません。嫌な思いをさせてしまいました。
いくら を抱きたかったとはいえ 僕だけが・・・・・・」
謝罪の言葉を さえぎったのは の手の平だった。
「八戒さん、八戒さんが謝る必要は何処にもないですよ。
いつも私は 何もしていないのに 八戒さんは私だけを感じさせて いかせるでしょ?
今の八戒さんの言い方を借りれば 私が酷い女だと言われているような気がします。
それとも 八戒さんは この行為を借りて 私が自分勝手な酷い女だと言いたいのですか?」
の瞳は 真摯な色をたたえていた。
「いいえ そんな事は 絶対にないです。
が酷い女だと 思ってなんていませんよ。」
「では 謝るのはやめて下さいね。
男女の睦み事は お互い様でしょう?
それに 八戒さんは 私に言ったじゃないですか、私が欲しいのを我慢できないんだって
余裕がないほど そう思われるのも幸せです。」
そう言って 微笑んだを 八戒は抱きしめた。
「 ありがとうございます。
じゃあ 約束どおり 今度はに感じてもらいましょうか・・・・・・
次は 僕も もっとゆっくりとを感じたいですし・・・・・ね。」
そう言うと 八戒は の身体に手を這わせた。
その言葉と 八戒の手の動きに は驚いたように 八戒を見た。
「あれ これだけで終わると思っていたんですか?
それは心外ですねぇ、のいくところも見ないで 僕が満足するはずがないじゃないですか。
食事で言ったら とりあえずビールを飲んだくらいですよ 今のは・・・・・、
これから 前菜が始まるんですからね 覚悟して下さい。
今夜は 最後のデザートまで お付き合いいただきますよ。」
八戒の言葉に 何か言おうとしただったが、すぐに降りてきた八戒の唇に邪魔されて
空気を揺らす事はなかった。
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